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ほとけさまのお話

2022/10/14 中啓

あるお寺のご住職さまがこんなお話をしてくださいました。

ご法事のお勤めが終わってからその法衣のまま帰りますと、娘さんが「父さん、これなにするもの?扇子?」と聞いてくるんです。お坊さんがご法要の時など中啓という扇子のようなものを持っておるんですが、それはね扇ぐものではなくて、お経本など大事なものを地べたに置かないためにこれを広げて、その上に置くためのものなんです。ですからそのことを娘さんに教えたんですね。「なっちゃん、これはね扇子じゃなくて中啓っていって、大事なものを地べたに置かないために使うんだよ。こうやって広げてここに大事なものを置くんだよ。」と言いました。それを聞いたなっちゃんは「ふーん、じゃあ、なっちゃんこの上に座ってもええね。」って言いました。先生はびっくりして「いやいや中啓が壊れてしまうけえだめよ。なんで?」って聞くと「だってなっちゃん、大事じゃもん。」っていったんだそうです。

微笑ましいエピソードですが大切なことを味わえるお話です。こどもは勝手に「私は大事です」とは名のりませんね。「なっちゃんはお父さんお母さんの大事な子なんよ。よう生まれてくれたねえ。」と何度も何度も呼びかけられたから「私のいのちは大事なんだ」って思うようになったんでしょう。私たちのいのちが大事だと言えていくのは仏さまに「あなたは大事ないのちだよ。」と抱かれているからなのでしょう。

副園長

 

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