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ほとけさまのお話

2025/04/10 子を亡くした母

あるところに、お母さんと男の子がいました。

ある日、その男の子が、まだ小さなうちにかわいそうなことに病気で死んでしまいました。お母さんは泣きながら「わたしの坊やを返して!だれか、この子を生き返らせてください!」と、村の人たちに頼んで回ります。でも、だれも小さな男の子を生き返らせることはできません。悲しみの消えないお母さんは、とても賢いと言われていたお釈迦さまならなんとかしてくれるかもしれないと思い、お釈迦さまのところへ行きました。「どうか、わたしの坊やを生き返らせてください!」とお願いすると、お釈迦さまは、やさしい顔で「わかりました。もし、まだ一度も死んだ人のいないおうちから、ケシの実を一粒もらってくることができたら、あなたの坊やを生き返らせてあげましょう。」と言います。お母さんは、大喜びで村中の家を訪ねて歩きました。「すみません、ケシの実を一粒ください。まだ一度も死んだ人のいないおうちのケシの実が欲しいのです。」でも、どこを訪ねても「うちには、おじいさんが前に亡くなりました」「うちの赤ちゃんも、病気で早くに…」

どこにもまだ一度も死んだ人のいないおうちはありませんでした。

そのとき、お母さんは気がつきました。「そうだ。死ぬことは、わたしの坊やだけのことじゃなかったんだ。みんな、悲しい思いをしているんだ…」お母さんはやっと悲しみを乗り越えることができました。

副園長

Before
杯中蛇影